安 全 対 策
一連の作業では、一通りの安全対策は実施しております。ここでは、独自に取り組んでいる内容をご紹介します。
【 追いヅル伐りの多用 】
太い広葉樹・松や腐れが入っている木を伐倒する際には、安全第一を考慮して必ず『 追いヅル伐り 』と言う方法を採用しています。
追いヅル伐りとは?
追い口でツルを作る際に、通常の方法とは異なり先にツルをしっかり確保して、伐倒者が出来るだけ木から離れた状態で安全性を高めながら、木を倒す方法です。追いヅル伐りの方法については、当組合のメンバーがご自身の HP 内で公開している動画を転用していますので、ご覧下さい。
ちなみに、「 何故太い枯れたマツに追いヅル伐りを?」については、当組合のメンバーの下記ページで同じく動画で紹介されています。その他、木が倒れていく様だけを収録した動画 「 伐倒! the Movie 」も公開されておりますので興味をお持ちの方はご覧頂ければ幸いです。
何故、この方法だと安全性が高いのか?
広葉樹や枯れ・腐れが入っている木、更に偏心木を伐倒する際、通常の方法では途中で幹が裂けて伐倒者に落ちてくる場合があります( バーバーチェアーとも言います )。この時、伐倒者は木に一番近づいている状況で起きます。その為、裂けた木が落ちてきた場合に避けられません。実際、これにより尊い命を失った事故もあります。
追いヅル伐りでは、最後の切り離し時に、伐倒者は木が少し離れた形となりますので、直撃の可能性を下げる事が出来ます。( この場合、伐倒者は 1mm でも多く離れておいた方が良いです )この方法による伐倒では、広葉樹での隠れた二股の木でも安全性を高めて伐倒する事が可能となります。
【 倍力システムによる牽引 】
近年、巨木化が進む森林における伐倒では、安全対策の1つとして事前に牽引仕組みをセットしてから、伐倒を行う様にしています。この際、直引きで行うのではなく必ず滑車を設置して牽引者の安全確保を行います。しかし、人の力で太く重い木を牽引する事は不可能なので、牽引具( プラロック )を使用しています。
ところが、この牽引具ですら引っ張れない状況も多々あります。その為、倍力システムと言う方法を使って、牽引の力を 3倍にしています。
【 超偏心木での事前養生 】
超偏心木を伐倒する際には、途中で裂ける可能性が非常に高くなる為、安全第一で繊維ロープやワイヤーロープで幹を養生してから伐倒を行っています。
【 GPS の座標表示 】
緊急時のレスキューヘリ要請時に備えて、作業現場が林道等から離れている場合には、事前に GPS の位置情報を取得し、誰もが目につく立木に座標を表示しています。ヘリでの救助要請を行う際、最速でレスキューが到着出来る有効手段は、GPS の座標を報せる事です。もちろん、事故はあってほしくはありませんが、万が一の発生時に迅速に対応してもらう為の対策です。レスキューヘリの操縦士は、山林に詳しい訳ではありませんので、古い地名やマイナーな沢・峠を言われても、分からないそうです。しかし GPS の座標が分かれば、最速で現地に到達出来るそうです。( これはレスキュー隊の操縦士さんから直接聞いた話です )
【 教訓 】
安全性の向上について、どこまでやれば良い、と言うものはありません。ゴールが無いのが安全対策です。人間は間違いを起こします、それが人間です。でも、その間違いを起こさないシステムを構築する事が大切ではないでしょうか?例えば、合図の徹底。全員が統一した合図を行う事で勘違いによるミスを低減させる事が可能となるでしょう。山の中で合同で作業を行う際、1つの勘違いによるミスは大きな事故を起こすきっかけとなりえます。そして、安全に対する意識の向上です。意識が低く不注意により、怪我をして1番困る・悲しい思いをするのは誰でしょうか?ご本人とご家族です。『 後悔、先に立たず 』この言葉はとても重いです。更に、人をあおう行為。人間はあおられると、普段と異なった行動を起こしてしまいます。特に不慣れな人ほど、平常心を無くしミスを起こしやすくなりますから。『 ヒューマンエラーはシステムエラーから起こる 』とても重要です。